子宮内膜症
Column
子宮内膜症という病気をご存じですか?
「生理痛が年々ひどくなる」「鎮痛剤を飲んでいてもつらい」「妊娠しにくい気がする」―――そんな症状の背後に、子宮内膜症が潜んでいるかもしれません。
子宮内膜症とは?
子宮内膜症は、本来なら子宮の内側にだけ存在する「子宮内膜」に似た組織が、子宮内膜以外の場所にできてしまう病気です。
月経のたびに出血や炎症を起こしますが、月経血と異なり体の外に排出されずにその場にたまってしまうため、痛みや癒着を引き起こし、不妊症の原因になる事もあります。
どこにできるの?
子宮内膜症の病変は、次のような場所にみられます。
- 卵巣:「チョコレート嚢胞」と呼ばれる、古い血液がたまった嚢胞を形成することがあります。大きくなると破裂したり、卵巣がんに変化するリスクがあるといわれています。
- ダグラス窩(子宮の後ろ側):下腹部痛や性交痛、排便時痛の原因となる事があります。
- 卵管や子宮周囲のじん帯:癒着を起こしやすく、不妊につながる事もあります。
- 腸や膀胱、肺などほかの臓器:下血や血尿。気胸などの症状を起こすことがあります。
子宮内膜症の主な症状
- 月経痛の悪化:毎月の月経が重くなる、痛みを感じる期間が長くなる、などの症状が起こります。
- 性交痛や排便時痛:骨盤内の癒着や炎症により、性交や排便時に強い痛みを感じることがあります。
- 不妊:卵管や卵巣の癒着や卵巣機能の低下、炎症などにより、妊娠しにくくなることがあります。不妊症患者の25~50%に子宮内膜症を認めるといわれています。
放っておいていいの?
放置すると、癒着が進んだり、卵巣機能が低下する可能性があります。
チョコレート嚢胞は、大きくなると破裂したり、がん化のリスクも指摘されているため、定期的なチェックが大切です。
治療法について
子宮内膜症の治療は、「症状の強さ」「年齢」「妊娠希望の有無」などを総合的に判断して選択します。
1. ホルモン療法
子宮内膜症の進行を抑え、痛みを軽減するための中心的な治療法です。
女性ホルモン(特にエストロゲン)の作用を調整し、子宮の外にできた内膜様組織が反応・出血しないようにすることで、症状の悪化を防ぎます。
低用量ピル(LEP療法)
エストロゲンとプロゲスチンが配合された飲み薬で、排卵を抑え、子宮内膜を薄く保つ作用があります。
月経痛の軽減や出血のコントロールがしやすく、子宮内膜症の進行抑制にも有効です。
1日1回の服用で、日常生活にも取り入れやすい治療法です。
副作用としては、吐き気、不正出血、頭痛などがあります。また、重篤な副作用としてまれに血栓症を起こすことがあり、喫煙者や高血圧の方には慎重な対応が必要です。40代以上の方は、医師とご相談のうえ内服を続けるかどうかをご検討ください。
黄体ホルモン製剤
エストロゲンを含まず、黄体ホルモン(プロゲスチン)のみ子宮内膜症の活動を抑える薬です。
月経を止め、子宮内膜の増殖を抑えることで、病巣の出血や炎症を鎮め、痛みの軽減が期待できます。
血栓症などエストロゲンによる副作用の心配がなく、長期使用にも向いていますが、1日2回の服用が基本となり、飲み忘れないようご注意ください。
副作用として最も多いのが不正出血で、特に服用開始時期に頻繁に見られますが、ほとんどは数か月以内に改善します。
そのほか、頭痛やむくみが現れることがあります。
GnRHアゴニスト/アンタゴニスト製剤
脳からの性腺刺激ホルモンの分泌を抑え、一時的に「閉経状態」を作る事で、病巣を休止させる治療法です。
高い効果が期待できますが、更年期のような副作用(ほてり、発汗、骨密度の低下など)が出やすいため、長期使用には向いていません。原則として6か月以内の短期使用が基本です。 活用される場面としては、次のようなケースがあります。
- 症状が強い場合や不正出血が懸念される場合に、まずGnRH製剤で症状を落ち着かせてからLEP製剤や黄体ホルモン製剤へ移行する”導入”目的
- 手術前に病巣を小さくし、手術をしやすくする“術前治療”として
- 閉経が近い患者様に対して、閉経までの”逃げ込み療法”として
2.手術療法
- 腹腔鏡手術にて癒着やチョコレート嚢胞の除去を行うのが主流です。低侵襲で回復も比較的早いです。
- 45歳以上と比較的高齢な場合、重症な場合には根治手術(子宮・卵巣摘出)が選択されることもあります。
3.対症療法
主に痛みや症状を緩和する目的で選択されます。- 鎮痛剤(NSAIDs):痛みを抑える効果があります。
- 漢方薬:体質や冷え、血流の滞りを改善しながら、月経痛や下腹部痛を和らげます。当帰芍薬散、桂枝茯苓丸、加味逍遙散などがよく選択されます。
無理せずご相談を
早期発見・早期対応が大事になります。
「毎月の事だから」「もう少し様子を見よう」と我慢せず、気になる症状があるときは、ぜひ婦人科へご相談ください。
女性の体と心の変化に寄り添い、健やかな毎日をサポートします。
当院では、症状やご希望に合わせた治療を行っております。お気軽にご相談ください。